2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ジャックの一日

カーペットの隅をていねいに押さえつけ、職人ジャックは「うーん」と伸びをした。 やっと貼り終わった。コーナーがぴしっと納まると、気分がいいぜ。 部屋の中を振り返って、ジャックは頭をかしげた。 カーペットの下に、異物を敷き込んでしまっているのだ。…

リカちゃん命の電話

「もしもし。わたし、リカちゃん。 今、あなたのベッドの下に、鎌を持った男がひそんでいるの」 人気ブログランキングへ

別人

俺自身を殺して、庭に埋めた。 完全犯罪だ。これは、誰もやったことがないだろう。 誰も心配しないし、探しにも来ない。 が、数日後、ひとりの子供が庭に入って来て、俺を指さしてこう言った。 「ひとごろし!」 それは、子供のころの俺だった。 それからと…

墓地

雨の降る夜、墓地のそばを車で通りかかると、道端で髪の長い女がずぶぬれで立っているのを見た。 気持ち悪いので、無視して通り過ぎた。 それからすぐ、また同じ女を見た。いやだな。ついてきたのか? 5回も同じ女を見たとき、気付いた。これは同じ場所だ。…

着信

MP3プレイヤーで音楽を聴いていると、電話の呼び出しベルが聞こえ始め、 そのうちベル音だけが延々リピートされだした。 気持ち悪くなってストップボタンを押すと、 「あ、やっと出ましたね。警察ですが、お母さんが事故に遭って、重体です。 すぐ救急病院ま…

タクツー

変だ。このタクシー、変だ。 ボディの表記が「タクツー」だった。 変だ。この運転手、変だ。 ヒゲが下から上に向けて生えている。 変だ。向かっている方向が、変だ。 駅に行ってくれと頼んだのに。 変だ。なぜこんなところに来たんだ。 降ろされた場所は、火…

生命のふしぎ

川の下流から、人の水死体が流れてきた。大変だ。 通報しようと思っていると、また流れてきた。下流から。 ・・・ちょっと待て。なぜ下流から上流へ流れるのだ? こちらの疑問を尻目に、死体はどんどん流れてくる。 そして、おお、なんということか。 死体た…

始めと終わり

工事現場の土中から、古代の遺物が見つかる。 ただちに作業は中断、学者達が呼ばれて調査が始まった。 どうやら、見つかったものは人間の足の一部らしい、ということに。 巨大な足にはかかとがあり、指が5本。親指の位置からすると、右足のようだ。 そこか…

四次元野球

☆その概要 三次元の世界は、幅、奥行き、プラス高さの概念で表わされる。 その空間が時間軸に沿って展開されたものが四次元である。 三次元における時間の概念は、四次元においては空間の一部である。 したがって、三次元野球は、四次元の世界においては静止…

クイズ野球

魔球界には、さまざまな野球が存在する。 その中でもきわめて特異なものが、「クイズ野球」だ。 全体のチーム編成も、グランドの使い方も、通常の野球となんら変わるところはない。 しかし、ボールを使わないところが非常に独特な部分だといえる。 まず、ピ…

白球の誓い

野球軍のメンバーが全員、デッドボールをうけて死んでしまった。 この話は、そこから始まる。 まだ一回の裏なのに、ナインがひとりもいない。 これではこの試合、負けてしまう。 監督は、焦った。なんとかしなくては。 何かまだ打つ手はあるはずだ。 とりあ…

博士たちのバラード

神呪寺博士は、目を輝かせて言った。 「最強ロボットの完成じゃ!」 前回に続いて今回も、正義のロボットは悪の秘密結社を退けることが出来るのか。 一方そのころ、悪の秘密基地でも、Dr.ビッチが新型ロボットを完成させていた。 「これで世界制服も、意…

秘密の場所

うちの郵便局の管轄に、秘密アジトがある。 なんせ郵便物に、配達先の住所が書いてない。 大抵は、配達課の最古参、的場さんが届けに行っている。 ある日、的場さんが休みのときに、秘密アジトあての郵便があった。 新聞屋さんやそば屋さんなんかに道を尋ね…

ビーチで大ピンチ ! の巻

夏。戦隊も休みをもらって、海水浴。 旅館で朝ごはんをすませたら、砂浜に5人で突撃 ! 海はいいなあ! 泳ぎ回ったあとは、午後から砂浜に縦穴を掘って埋めっこするぞお ! 首だけ出してね。 さあ、俺も埋めてくれ ! まて。何か、おかしい。全員が埋まって…

ましらの壷に気をつけろ ! の巻

腹を空かせた戦隊の前に、5つの壷。 中には、マメが入っているようだ。しめしめ。これをいただくとしよう。 それぞれ手を突っ込んで、中のマメをつかんだが、どうしたことか、手が抜けない。 「うきゃきゃきゃきゃ。まんまと罠にかかったな。諸君」 さる十…

戦隊、あやうし!!

神社におまいり。 鳥居をくぐったら、つぎの鳥居はちょっと小さくなっていた。 こうして、ちょっとづつ鳥居は小さくなってゆき、最後の鳥居で体がはまってしまった。 ううっ。動けない。リーダーの俺としたことが、こんなはずでは。 「ふふふふふ。まんまと…

おはなしの夕べ

河原に腰かけ、沈んでゆく夕日を眺めているひとときは、とてもやさしい気分になる。 「逢魔が刻」などともいうが、この時間帯は、特別な感情を人に与えるものなのだろう。 ハーモニカを取り出し、フォスターを吹いてみた。「金髪のジェニー」。いい曲だ。 演…

脳内クイズ

背中にできたデキモノが合体し、顔が現れた。「人面瘡」というやつだ。 こいつは、話しかけてくる。口でしゃべらず、こちらの脳に直接ことばを送り込んでくるのだ。 困ったことに、その内容はいつもクイズ。それも、こちらが忙しい時に限って出題してくる。 …

はかせのはつめい

はかせは、はつめいが、とくいです。 「がったいへんしんろぼができたので、みにきなさい」というので、みにいきました。 へやには、ろぼっとがいました。 「このぼたんをおしてみなさい」とはかせがいうので、おしました。 するとたちまち、ろぼっとは、う…

給水塔のある風景

ついうっかりしたことで、魔王に追っかけられるはめに。 めくら滅法に逃げるうち、貯水池へたどり着いて行き止まりだ。 施設には巨大なモニュメントが建っている。これは給水塔だろう。 魔王は、「おお・・・なんだこれは。でかいな」と言って、じっと魅入る…

なんとなく、しゃくなげ。

今日は死神さんに来ていただいています。 死神さん、どうぞ。(拍手) えー、どうも。死神です。ほんまに。 あのー、まあ、あれですね。私なんかよく、死にそうなひとを探して歩いてるんですけども。 職業柄ね。ええ。 そんで、やっぱり、ちょこちょこ居はる…

悲喜劇

寒い。気がついたら線路に横たわっていた。 酔っ払って終電をなくし、線路づたいに帰ろうとしたところまでは覚えている。 夜が明けてきた。もうすぐ始発が来るな。 立ち上がろうとしたが、体が動かない。 フト見れば、大の字に倒れた両手を死神が、両足を悪…

人界(探訪その4)

・・・と、いうわけで。 これからの人生を考え直し、貴社の面接にうかがった次第です。 楽して出来る限り長生きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

霊界(探訪その3)

マサカド将軍によると、亡霊となってこの世に留まるには、よっぽど深い怨念がないとダメなんだそうな。 この世に亡霊デビューするのを待っている予備軍はいまや長蛇の列をなしており、列の後半にいる者はほとんど否応なしに地獄へ連れて行かれるんだとか。 …

天国(探訪その2)

天国を見学させてもらった。 白い衣を着て、美しい人々でいっぱいだ。 想像と違ったのは、みんな働いていること。 大きな金色の石臼に取っ手の付いたものを、何人もの天使たちがごろごろと回している。 魂を生産しているのだそうな。 虹色のハープで糸をつむ…

地獄(探訪その1)

地獄を見学させてもらった。 わりと楽しめそうだ。 賽の河原で、子供たちの積んだ石をこわすのは是非やってみたい。 やらせてくれと大王に頼んだが、ダメだそうだ。 「お前は積むほうの側」とのこと。なんだ。つまらない。 血の池地獄で、浮いてきた亡者を槍…

料理の達人

晩ごはんをこしらえていると、ある日から幽霊が現れるようになった。 痩せた、若い男だ。彼はずっと暗い顔でうつむいている。 そして、いつも私が調理しているキッチンに入って来ては、うしろからのぞき込むのだ。 食べたいんだろうか? そう思って小皿に料…

わかりやすい死

だれもいない公園で、ブランコがひとりでに揺れている。 なんだかとても楽しそうで、どんどん揺れが大きくなる。 見ているうちに踏み板は揺れながらてっぺん近くまで上がるようになり、 最後には何回転も回って支柱にクサリを巻き付け、止まった。 なるほど…

屋上サドンデス

うちのマンションの屋上には、塔屋を改造したコンビニがある。 ものぐさな独り者にとっては、大変便利だ。 コンビニの上には、ちいさな珈琲屋が建っている。 ここへは梯子で上がるようになっているので、雨の日は不便だ。 椅子も3つしかないが、わりと流行…

リカちゃん国際電話

ひさしぶりに、リカちゃんから電話だ。 「わたしリカちゃん。今、ボンベイにいるの」 ボンベイのどこかと聞くと、ちょうどいま俺が泊まっているホテルのそばだ。 窓から広場が見える。 あ、いたいた。 リカちゃん、こっちだってば。うしろだよ、うしろ。