表札を見に行く
ぼーん。ぼーん。ぼーん。
みっつ音が鳴り、3時を報せる。
鳴ったのは、岡田さんちの表札だ。いつもぴったり3時に鳴るのだ、この表札。
なんで俺がそれを知っているかというと、いつも3時になるとここにくるからだ。
ああ、もうすぐ3時だな、もうすぐ鳴るな。もうすぐ鳴るな。
そう思うと、自然に足が岡田さんちの前に向いてしまうのだ。
俺だけではない。
毎日そういうひとが増え続け、今日はちょっとしたひとだかりが出来ている。
「すみません。ちょっと通してくださいね。すみませんね」
ここんちの奥さんが、ひとごみをかき分けるようにして出てゆく。
ちょっとくすぐったそうな半笑いだ。うれしいに決まってる。
でも、「うちはもうこんなのに関心ないんですよ」といったふうを装っている。
にくい。ああにくい。
奥さんよ、俺たちはな、あんたを見に来てるんじゃないんだぜ。