どうやら俺は、死んだようだ。 あの世で、数年前に死んだオカンの住む家に来ている。 外は電車でも通っているのか、かたかたとちいさく壁が揺れている。 「俺の人生では結局、なんにもたいしたことは出来なかったよ」 そう報告すると、オカンは目を伏せたま…

若草萌える丘の斜面で、タカシが寝っ転がっている。 そこへ若草のこびとさんたちが集まってきて、眠るタカシを、斜面の下へ転がし始めた。 大学の相撲部一年生のタカシは、丸くてよく転がる。 ころころころころ、若草の上を、気持ちよく転がってゆく。 こび…

白昼、ビル街の真ん中で、青白い顔の男が立っていた。 見るからに異様な風体なのだが、だれも彼に気付かないようだ。 間違いなく、幽霊だな。 男は、手に銃を持っている。 それをそこらへんの人に向けて引き金を引き、当たったと言っては喜んでいる。 幽霊の…

朝、目が覚めると、雨だ。いやだなあ。 せっかくの休みなのに、これじゃどこへも行く気にならないなあ。 布団の中でぐずぐずしているうち、フト、なんで雨だと分かるんだろう、と思った。 不思議なことに、部屋の中に雨が降っているようだった。 かぶった掛…