私的静岡

GoN2007-12-07



東京に住んではいるが、周辺の県のことはよく知らない。
まだ千葉、神奈川、埼玉あたりはリアルに存在する土地として受け止めて
いるものの、茨城や栃木、群馬などは空想上の地名のようにしか聞こえない。


静岡なんかは、新幹線の窓からだけ見える、バーチャルな世界だ。
そんな感じなんです。
それでは、私の頭の中にある「バーチャル静岡」に、皆さんをご案内しましょう。


まず、静岡は、富士山の裾野から頂上へ向けて迫り上がる形で広がった土地です。
なので、人々の捨てたジュースの缶(おーいお茶、とか)やガチャポンのカプセル、
野球で野手が捕りそこねたりゴルフで見失ったりしたボールなんかは、
すべて県境へ向けて転げ落ちてしまいます。
そこで、他の県の県民たちに迷惑にならないように考え出された名案があるのです。
そう、「茶畑」ですね。
きれいに刈り込まれた茶畑の溝は、転げ落ちるさまざまなものをキャッチし、
それ以上先へ行かせないためにあるのです。


しかし、茶畑ではキャッチしきれない大型の落下物も存在します。
例えば富士山の頂上から滑落した登山者。
彼らは、障害物の無い富士山のなだらかな斜面を、すごい勢いで、
一気に清水港まで転げて行きます。
茶畑の緑をなぎ倒しながらだんだん速度をゆるめ、最後に砂浜でストップするのです。
そして「イテテ・・・あ、海だあ。」なんて気が付いたりするわけですね。


もちろん、霊峰富士について詳しくない私でも、あの斜面がどうなっているのかを
聞いたことはあります。
富士山の山肌は、近くで見ると一面砂利に覆われており、そこを転げ落ちれば、
まるで紙やすりをかけられたかのようにズタズタになるという話です。
おそろしいことではないですか。


頂上から滑落した登山者は、ズタズタのボロボロになりながら転げ続け、
茶畑を血に染め上げながら一気に清水港まで到達するのです。
砂浜で倒れた登山者は、打ち寄せる波の音を聞きながら目を覚まします。
そして、「イテテ・・・あ、カニさんがいる。」なんて思ったりするわけです。
「潮が満ちて来るなあ・・・でも動けないなあ・・・」なんて悲しい気持ちに
なったりもするんだと思います。


満潮時の波は、横たわるあわれな登山者を、ふたたび富士山の山頂へと
押し上げます。
そして、潮が引けば、ボロボロの登山者は、さらにまた斜面を転げ落ちる
という悲劇を体験します。
こうして、7度も転落を繰り返したのち、8度目に起き上がり、
男は真の山男として輝き出すのです。
そして、頬を赤らめた茶摘み娘たちが、傷だらけの山男を、そっと茶畑の
茂みへ誘います。
そうなれば、もう立派な静岡県民。
あちこちからパチパチと県民たちの拍手が聞こえ始めました。
そして富士の裾野は、明るい笑いと喚起につつまれるんだと思います。
「Welcome ! 」「Welcome !」「Welcome ! 」「Welcome !」・・・


なんだか、一度訪れてみたい気がしますね。
そうだ。静岡行こう。