さよならじいちゃん
寝床にふせっていたじいちゃんが、いよいよあぶない。
そう聞いて帰省してみたら、じいちゃんの枕元に黒い人が座っていた。
死神だろうと思った。
じいちゃんを見下ろすその憂鬱な顔を見ていたら、いたたまれなくなってきて、
鞄からプラスチックの下敷きを取り出し、死神の頭にこすりつけてみた。
ちりちり、といって逆立つ死神の髪の毛。
「やめろ」
とおこられたので、こわくなってやめた。
その晩、死神はじいちゃんを連れて行った。
去りぎわ、いたたまれなくなって、また下敷きで死神の頭をこすってみた。
また逆立つ死神の髪の毛。
「やめろ」
とまた言われたので、やめた。
やっぱり、ダメなものはどうしたってダメなのだ。
さよなら、じいちゃん。