来なくなった円盤乗り
太郎くんが、足の小指を机の脚にコツン。
花子さんが、ひじを椅子の背もたれにパキン。
大介くんが、むこうずねをベッドにゴツン。
「!」
声にならない声は光の速さで空間を飛び、はるかかなたの星まで届きます。
この瞬間にも、地球上で何万人もの人が「!」と叫んで、泣き笑いしています。
はるかかなたの星では、その叫びをキャッチした円盤乗りが、
「ヨシ。」
と寝床を蹴って起き上がります。地球へ行こう。
「誰か呼びましたか?」
空で宇宙船は旋回しますが、誰も答えるものなどありません。
もちろん、誰も呼んでないからですね。
がっかりしたように帰ってゆく、宇宙船。
こんなことをくり返し、もうこのごろでは、宇宙船は来なくなりました。
叫びが届いても、円盤乗りは布団から出る気がしないのです。
「!」
それでも地球は回り、人々は叫び続けています。