塞翁が馬

よちよち歩きの幼児を連れたお母さん。
散歩から帰ってきて、エレベータのボタンを押す。
そこで亭主からケータイに着信。


話しているあいだにエレベータのドアが開く。
子供はよちよちとひとりで中へ。
お母さんは「ダメよ」と言って、リードを引っ張る。
子供は、犬みたいな感じでつながれていたのだ。


閉まるドア。
誰かが上でボタンを押したらしい。
エレベータは上へ。
お母さん、真っ青。


エレベータは、2階で止まった。
ほっとするお母さん。リードの長さは充分ある。
誰かが乗ったようだ。
しかし、運命は意地悪。降りてくると思ったエレベータは、さらに上へ。


からからから。音がする。
リードが落ちてきたのだ。
乗った人が気付いて、子供からはずしてくれたのだろう。
ああ、助かった。


エレベータは最上階まで上がり、また降りてきた。
しかし、ドアが開くと中は空っぽ。


・・・どういうこと?
とにかく上の階まで行こうと箱に乗りかけたその時。


どすん。


マンション入り口で鈍い音。
路上で通行人が悲鳴をあげる。まさかうちの子が上から。


行ってみると、倒れていたのは2階に住む顔見知りの奥さん。
自殺らしい。
結局、子供は最上階のエレベータ前にいた。
2階の奥さんに、ついて来てはいけないと言われたそうだ。


みなさん。とりあえず、ここではホッとしておいてください。
この子は20年後にとっても凄惨な死を遂げるのですが、とりあえず、この話はここで。


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