24階

給湯室でお茶の用意をしていると、外が妙に明るくなった。
車のヘッドライトな訳がない。だってここは、ビルの48階なんだもの。
窓から見ると、UFOがこのビルに接近してきていた。


ぶつかる、と思った瞬間。


UFOは光のすじとなり、ビルの周りに巻き付いた。
なんだかちょっとうれしい。UFOって、じつは「道」だったんだわ。
窓から出て、光のすじに足を載せてみる。
何の問題もなく歩けそうだ。


ひゅう、と高層階の風が、顔に吹き付ける。
きっとこの風は、南米あたりから直接吹いてくるのに違いないわ。
地上を這い回っているやつとは、なにかが全然違うのよ。


「おい君。そんなことしちゃ、あぶないじゃないか。社内に戻りたまえ」
係長だ。いつもえらそうに言うわりには、こういうときに度胸がない。
ほっといて、歩き出す。


どんどん歩いて、UFOの終わりまで来たので、また窓から入る。24階。
後ろを振り返ると、係長がよたよたしながらこっちへ来る。


社内に足がついたところで、UFOはふたたび飛翔した。
係長が乗ったままなのに。


でも、そんなことより。


24階って、なんて気持ちがいいんでしょう。


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