ロケット内日常

宇宙ロケット内郵便局に、怪しい男出現。
黒ジャンパーに、目出し帽。
「この郵便を至急に金星まで送りたい」
一方の手には、文化包丁。


「お送りしますが、今このロケットは土星に向かっておりますので、
地球へ折り返した帰路に・・・」
局員が応対すると、怪しい男は激昂する。
「進路を変えて今すぐ向かえ!」


局員が、防犯ベルを押した。あわてて外へ飛び出す怪しい男。
ロケット内商店街を抜け、駅前の路地に消える。
買い物の主婦や学校帰りの学生でごった返す通りは、ちょっとした騒ぎ。


「ぶっそうなこった」
金物屋のじいさんが駅の方を眺めて言う。
土星に着く前につかまえてもらわんとなあ」
今川焼き屋のおやじが返す。


サイレンの割れた音が、商店街にひびいた。
「もうすぐ隕石群を通過します。ゆれますので、ベルトを着用してください」


「あいよっ」
おやじたちは店に引っ込む。
商店街も街も、一気に静かになった。


にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ