生きる意味と、死ぬ必要
もう生きていてもしょうがない。
そう思った。もう死のう。
縄を輪っかにして吊り下げ、首を通す。
踏み台を蹴ろうとして、フト隣を見ると、誰かいる。
それは俺だった。俺は、同じように輪っかに首を入れようとしていた。
反対側の隣りにも、俺がいた。
部屋を見回すと、なんと、ほかにもたくさんの俺がいるではないか。
テレビの前に座ってポテトチップを食っている俺。
パソコンでネットを見て、商品購入を考えている俺。
ケータイの説明書を読んで、頭をひねる俺。
窓から身を乗り出して、通りがかりの猫にちょっかいをかける俺。
腕立て、腹筋運動にいそしむ俺。
などなど、いろんな俺が生活しているのが見える。
どういうことかはわからない。
とにかく、そこに俺たちが生活しているのだ。
そんなやつらに混じって、死ぬやつもいるわけで。
べつにそれもいいんだけど、そんなことを考えたら、死ぬ気も失せてしまった。
今、俺はおりたたみ自転車を買いに行くところだ。
ついてこなかった俺も何人もいるにはいるのだが、
かなりの数の俺が賛同して一緒に自転車屋まで来てくれている。
これはなかなかにうれしいものだ。