海辺のトーク

血だらけの男が防波堤に、こっちを向いてたたずんでいる。
どんよりとした空。重たい灰色の雲。
うしろでは、波がコンクリに打ち寄せては、白い泡となってくだける。


男の足元には、なぜかリモコンが落ちている。
電源を入れると、男がしゃべり出した。


「俺は殺され、ここまで運ばれて・・・」


身の上話か。くらい話はきらいだ。チャンネルを変えてみよう。
男の口調が変わった。


「釣り情報です。きょうの沿岸部は波が高く・・・」


わかってるよ。
ほかのチャンネルはどうだろう。


「これがあんたとこの子供かい、可愛いなぁ。お人形さんみたいだ」
「嬉しいじゃねえか。ええ?近所の奴は猿だなんだと悪いことばかりぬかしゃあがって。
お前だけだよ、そんな嬉しいこと言ってくれたのは」
「いや、ホント人形みたいだよ。おなかを押すと、キュッキュ言いやがる」


落語だ。ちょっと面白いから聞いてようかな。
幽霊がみんなこういうサービスやってくれたら、人気も出るのに。


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