要領の問題

そこそこ高いお金を払って、試験を受けた。
殺風景な教室の長机には、20人ほどの受験者がスタンバイ。みな、かしこそうだ。


教官が、ひとりひとりの席を回って、用紙を配る。
質問用紙の他に、段ボール箱がひとつ。
中を覗くと、棒の羊羹が並べて入れてあった。


「制限時間は40分。各自、問題をよく読み、解ったら羊羹を食べてください。
お茶が欲しい人は、手を挙げて知らせてくださいね。では、始め」


みんな、もぐもぐ羊羹を食べ始める。目は問題用紙に釘づけ、
片手で棒羊羹を口へ、もう片手は段ボールに突っ込んである。
自分は、問題がサッパリ解らないので、食べるわけにもいかない。
やっと解った1問で羊羹を食べる。ゴムのような、チョコレートのような、変な味。
お茶をもらってごまかしているうちに、タイムアウト


「はい、やめ。今から段ボールを回収します。
残った羊羹は持ち帰っていいですので、家でもういちど検討してみてください。
おつかれさまでした」
自分だけ、持ち帰る羊羹が妙に多くて恥ずかしい。


駅のそばの児童公園で、ベンチに腰かける。
なんだか、疲れてとてもだるい。ああ、来るんじゃなかった。
はだかのままの羊羹を脇に投げ出す。食べる気もしやしない。
蟻んこが集まって来て、羊羹をどんどん運んでゆく。お前ら、問題が解ってんのかよ。


そこでハッと気がついた。
他のやつら、問題を解きもしないでただ羊羹を食べてたんじゃないのか?


しまった。その手があったか。
そう気付いたときには、もう手遅れだった。


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