異空間との日常

外へ出ようとドアを開けたら、どうも様子が違う。八角形の広いロビーになっている。
ぐるりに大きなはめ込みガラスがはまった空間は、陽が入ってとても明るい。
真ん中にはちいさな螺旋階段があり、それを降りると砂浜につながっていた。
向こうに、打ち寄せる波が見える。東京の目黒区には、もちろん海なんか無い。


いやあ、いい景色だなあ。
しばし潮騒と、磯の香りを楽しむ。絶対外へは出ない。


そろりそろりと階段を上がり、八角形の部屋から自分ちの玄関へ戻る。
いったんドアを閉め、また開けると、いつものマンションの廊下だ。
こんなこったろうと思った。あのまま外へ出たら、帰ってこれないところだ。


さて、コンビニで夜食を買うか。
何事も無かったかのように外へ出る。
自分も、要領を得てきたものだ。


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