逃げ込んだ地下通路は、トイレになって行き止まりだ。 ひとつの個室に飛び込んでカギをかけてはみたものの、 無駄な抵抗なのは分かっている。 ドアがガンガン蹴られて、壊れそうだ。 薄い板一枚隔てて殺し屋集団がたけり狂っているのが分かる。 出て行ったら…

ペーター： 親分、てえへんだあ！！ ハイジ： どしたいペーター。 おめえの「てえへんだ」は聞き飽きたぜい。 ペーター： そいつが親分、悠長にかまえてる場合じゃねえんでさ。 ゆきちゃんがいなくなっちまったんで。 ハイジ： なんでえなんでえ、慌てるねい…

出動要請を受けて駆けつけた部屋で、俺はガクゼンとした。 こんなコロシの現場、はじめてだ。 まず、死体がどこにもない。 そして血痕の一滴も検出されず、足跡も指紋も無い。 ていうか、荒らされた形跡も無い。 その上、人が住んでいた痕跡も無い。 おい巡…