鎌男のはなし

ベッドの下に、鎌を持った男がひそんでいる。
コンビニへ行こうとしたら、のそのそ這い出してきて、背中に乗れと言う。
鎌男にまたがってコンビニへ。
買い物をすませ、また鎌男にまたがって帰ってくる。 
ベッドの下へキューリを一本やる。 これがきっかけで、鎌男との生活が始まった。


ある日、鎌男の様子がおかしい。
どうしたんだろう。病気だろうか。
心配していたら、ある朝、卵を4つ産んでいた。


卵から孵化したこどもたちはすくすく育った。
それぞれちいさな鎌を持って、コンビニへついてくる。
近所でも評判になった。


ある日、こどものうちで一番ちいさいのが、トラックに轢かれた。
もう動かないちいさな亡骸を見て、鎌男たちは一日、悲しそうにしていた。


ちいさな事件がもちあがり、鎌男たちが疑われた。
おろかなことに、自分も彼らを疑い、出て行くように言ってしまった。
さみしそうに、こどもたちを背中に乗せて出てゆく鎌男。
すぐに彼らの無実は証明されたが、探しても、もう遅い。


昨日もキューリをベッドの下に置いてみたが、帰っていないようだ。
ぽつんと干からびたキューリ。
いまごろ、どうしてるだろうか。
新しいベッドの下を見つけ、幸せに暮らしていることを祈る。