夜更けの訪問者

「おとうさん怖いよ」
息子が震える。
「このおじさん、こわいおばさんを背負っているんだもの」


戸口に立った男がぐったりと肩を落としたので、
男が背負っている怖い顔のおばさんに事情を聞いてみた。
すると、さっき殺されたのだという。


「この男にか」と聞くと、違うそうだ。
「ひゃっほー、俺じゃなかったんだ」
喜んで帰っていく男。
「じゃ、誰に殺されたんだ」
おばさんは、だまって前方を指さす。その先には、わが息子。


「むはははは。ばれてしまってはしかたがない」
息子だと思っていたのは、変装した小さな怪人だったのだ。
事態は急展開!! では、息子はどこに?


「おとうさん、ぼくはここですよ」
精巧に出来たおばさんのマスクとかつらをとると、なんと。
それはわが息子ではないか。よかった。息子は無事だ。


では、殺されたおばさんはどこに!?
「しまった。あいつだ。逃げられた!!」
怪人が合図をすると、かくれていた警官たちがわっと現れて、
さっき男が去っていった方へ駆けていった。
怪人は、じつは敏腕刑事だったのだ。


しかし、ふふふ。だれも気付いていないだろう。
殺されたおばさんは、じつはこの私だということに。