浜辺の牛乳
流れ着いた宇宙船。
浜辺を歩いていたヨシオは、足を止めてしばらくじっと眺めた。
ハッチが開いた。
そして、中から、ひとまわりちいさな宇宙船が出てきた。
なんだろう。ヨシオは、じっと見つめた。
ひとまわりちいさな宇宙船から、さらにちいさな宇宙船が出てきた。
なにが起こるんだろう?
その宇宙船のちいさなハッチが開いて、中から牛乳瓶が出てきた。
真っ白な牛乳が入っている。おいしそうだ。
ヨシオはそれを手に取り、飲んでみた。
うまい。
空の牛乳瓶をもとに戻すと、ハッチはまた閉まった。
ちいさい宇宙船は、ひとまわり大きな宇宙船に収納され、さらに最初の母船に
納まった。
そして、また沖合いへと流れていった。
ヨシオは去ってゆく宇宙船をまたしばらく眺めていたが、
突然ハッとして背筋を伸ばした。
そして、ヒロコちゃんの家まで、駆け足。そうだった。約束に遅れてしまう。
今日は授業のノートを写させてもらうことになっていたのだ。
「あら、ヨシオくん。牛乳飲んできたのね」
ハンカチで口の周りを拭いてもらう。ヒロコちゃんはいつも、いいにおいだ。
ヨシオ、13歳の春であった。