携帯電話と宇宙人

電車の中で携帯をいじっていたら、めずらしそうに覗き込む者がいる。
ひょっと見たら、宇宙人だった。


「ソレハ、ツウシンソウチ、デスカ?」


若い女性のようだ。
彼女の星の文明は進んでいて、通信手段はほとんどテレパシー。
電話という器械を見たことが無いのだそうだ。
めずらしそうに目を輝かせてモニターを見ている。


「ナニト、ツウシンシマスカ?」


何とだろう?ともだち、とか、家族、かな。
彼女は、彼女がやってきた星と通信できるか、と聞いてきた。
残念ながら、それは出来ない。使えるのは地球の上だけだよ。


「ソウデスカ・・・」


いかなテレパシーでも、数億光年はなれた彼女の星までは届かないのだろう。
彼女の目の光が暗くなる。ちょっとヘコんできたようだ。
そうだ。これで、ゲームもできるよ。
攻めて来る宇宙船をミサイルで落とすゲームだ。これはまずかったか。


しかし、宇宙人はたのしそうにゲームを始めた。
ぴこぴこ、ぷしゅん。ぴこぴこ。
彼女は寂しいのを忘れたようだ。よかった。


ひと月ほどして、彼女からうれしげな声で電話が入る。とうとう携帯を買ったのだ。
どうやってこちらの番号を知ったのか聞いてみると、それぐらいテレパシーで判読可能なのだとか。
じゃあなんで電話が必要なんだ、というツッコミはこの際なしで。
今はこういうものが楽しいんだろうな。


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