フルーツ怪人
怪人の頭に、木が生えている。
夕闇の迫る街角。怪人の影が、路面の赤レンガに長く伸びている。
怪人のシルクハットから伸びた太い幹は枝を広げ、大きな影をつくっている。
正義の味方が出動した。
「おい怪人!治安を乱しに来たか!正義はお前をゆるさない!」
ところが、その言葉をあざ笑うかのように、怪人の木はゆっさゆっさと揺れ、
たくさんの果物を落とした。
「フルーツだ!」「フルーツだ!」
ひとびとは木の下に群がり、果物をいっぱいもらった。
正義の味方も、ちょっとしょうがなさそうに、果物をもらった。
どこからともなく動物たちも現れ、果物を食べた。
怪人はよろこぶ人々の様子を見て、満足そうな笑みを浮かべ、
そして夜のとばりに消えて行った。