恐怖体験

俺はバスを待っていた。
うしろは建設現場。鉄の目隠し壁がそびえている。
もう夜なので、作業は終わっていて、静かだ。


なにやら視線を感じたが、鉄壁はずっと向こうの方まで続いていて、
この歩道にも自分のほか誰もいない。気のせいかな。
ようく見てみると、壁の下に地面から20センチほどの隙間がある。
そこに、作業靴が数足置いてあるのが見えた。


靴はどれもこちらを向いて並べてあり・・・
いや、もっとよく見ると、どの靴にもみんな足が入ってあった。
つまり、鉄壁の向こうで4人ほどの男たちが、壁に顔をくっつけるぐらいの距離に、
並んで立っていたのだ。


こちらを覗いているのか?
でも、一面を真っ白に塗られた鉄壁に、穴は開いていない。
立ち小便でもなさそうだ。


・・・じゃあ、何を?
鉄壁に近づいて撫でてみていたら、頭に何か落ちてきた。赤い。血だ。
上を見上げてみた。


3メートルほどあるだろう鉄壁の上。
そこに並んだ顔が4つ。どれも血まみれで、驚愕の表情を凍りつかせていた。
幽霊だ。ここの作業中に死んだのだろう。


なあんだ。そういうことか。
妙に納得して、丁度やって来たバスに乗り込んだ。


そして俺は、シートに座るや、あったかいおしっこをふんだんに漏らしたのだった。


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