忍び、危機一髪

天井裏から、節穴越しに部屋を見下ろす。
あいつがここの藩主だな。
こちらに背を向け、どうやら晩酌の最中らしい。殺るなら今か。


ごそごそごそ、と誰かが這ってくる音。びっくりしてそちらを見る。


「あちらのご当主様からです」
ウエイターが、シャンパンのグラスの載った盆を差し出している。
節穴から覗くと、藩主がこちらにチラと流し目をおくり、軽くグラスを持ち上げて見せる。
そしてまた、プイと向こうを向いてしまった。


・・・おい待て! 俺はそんなつもりで来たんじゃないぞ。


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