無人島作法

ひどい嵐だった。
浜辺でわが船は、木っ端微塵の残骸をさらす。
助かったのは俺ひとりのようだ。


半日足らずで一周できる、ちいさな島。
誰も住んでいない。無人島にひとりぼっち、というやつだ。
なにか無いか探してみたが、これといって生活に役立ちそうなものはない。


しかし、ひとつ不思議なものを見つけた。
浜辺に、ビンがいくつも落ちているのだ。
そのビンの中には手紙が入っている。この島から助けを呼ぶのに流そうとして、
潮流のせいで戻って来てしまったものなのだろうか。


入っている手紙はどれも奇妙な内容だ。
へそのわきのイボの話や、島で見かけた猫の話。どうもひっ迫した感じがしない。
中には、「ヤシの木とガジュマロの木ではどちらが好きか?」なんて質問もある。
聞いてどうするんだ、そんなもの?


とりあえず、「助けてください」という内容の文章をつづって、流してみた。
返事はすぐに来た。次の朝、浜辺を散歩すると、新たなビンをいくつも見つけたのだ。
どうやら、このあたりには他にも沢山の無人島があり、それぞれ漂流者がいるらしい。
彼らは、新参者に「無人島で生活するノウハウ」をいろいろ書き込んでくれている。
なるほど、これは連絡ノートなのだな。


それから3ヶ月。
いまだ、ここから脱出できる見込みは無い。
しかし、他の仲間のおかげで、そこそこ快適な生活が送れるようになってきた。
誰にもまだ会ったことは無いが、このままでもいいだろう。
どうせ一緒に暮らし始めれば、エサの取り合いが始まるに決まってるのだから。


「おにぎり島」の「ジャンク野郎」さんは、もう三日も日記を書いてない。
筆まめなひとなのに、なにか起きたんだろうか。無事ならいいが。


にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ