前途多難

桃太郎が、鬼が島へ向けて出発する。
犬、猿、キジを連れて、港へ向かう。


麻布谷町の坂を登るうちに、霧が濃くなってきた。
いや、これは霧ではない。
おどろくべきことに、それは羽虫ほどもちいさな「鬼」の大群なのだ。
街一面を埋め尽くす大群は、あたりを薄暗い夕暮れに変えている。


鬼たちがさかんに羽音をたてながら、桃太郎たちの目に次々と飛び込んできた。
これはまいった。目を開けていられない。


行く手をはばまれ、身動きのできない桃太郎一行。
後ろには車の渋滞ができているようだ。クラクションが、一行に向けて鳴らされる。
出発したばかりで、すでにこれほどの困難に見舞われるとは。


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