戦略

巨大な木馬が完成した。


まさか木馬の中に歴戦の勇士たちがひそんでいようとは、誰も思うまい。
城の前に置かれたこの木馬を、敵が取り込めば。
そして、夜中になって、敵が寝静まれば。
その時こそ、われらの知恵の勝利だ。


木馬は、城のそばの森まで運ばれた。
偵察に行った戦士のひとりが、「X」ポーズで帰ってくるのが見える。
「どうした。なにがあったんだ」


みんなで見に行くと、なんと。
敵の多いトロイ軍。城の前には、カエル、ウサギ、クマ、などさまざまな贈り物が、
すでにならべて置いてあったのだ。
中には、こっちのより立派なウマもある。かぶってるじゃん。


「よし、じゃあ俺たちはイルカで行くぞ」
「尻尾が動いて、かわいいやつにしましょう」
「目立つのがいい。銀色の波しぶきもつけよう」


また、ふたたび建造が始まった。
きっと俺たちのイルカが、一番だぜ。


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