いらないよー

みずうみのほとりでお弁当を食べていると、湖面にさざなみが立った。
そして、ひとりの美しい女性が現れた。女性は、みずうみの女神であるという。
女神は、ほほえみながらたずねてきた。


「あなたは、なにか落としましたね?」


いいえ。なにも落としてませんよ。女神さま。


そう答えると、女神は袋を突き出して見せてきた。
中には人間の首が、ごろごろ入っている。


「生きてる生首。生きてるようで、じつは死んでる生首。
死んでるようで、じつは生きてる生首。ほんとに死んでる生首。」
女神は、にっこりして、また聞いた。


「あなたが落としたのは、どの生首かしら?」


だから、落としてませんってば。


女神は、いっそうやさしくほほえんだ。
「あなたは、正直な、よいひとですね。
正直のごほうびに、これらの生首を、全部さしあげましょう」


いらないよー!いらないよー!


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