天上のマナー

キリンが何頭も立っている。近くで見ると、やっぱりでかい。
見上げていて、気付いた。
長い首の上には、どのキリンも頭がついていない。


どういうことだ?


よく見ると、キリンたちの頭は、低く垂れ込めた雲の上にあるようだ。
面白いので、雲の上に出てみた。


一面に広がる雲海。太陽が反射し、とても明るい。
ぽかぽかと暖かく、また空気が凛と澄んでいて、気持ちいい。
そこここに、キリンたちの頭が突き出している。


いや、待て。


どれも、顔がキリンじゃない。人だ。
男も女も、長い金髪の巻き毛をなびかせ、頭上には光の輪をいただいている。
キリンって、天使だったのか。


「おい、きみ」
ひとりの天使が、こちらに声をかけた。


「ここへ体ごと来てもらっちゃ困るねえ」


おだやかだが威厳のある、厳しい声。
あっ、すみませんでした。
すぐに地上へ戻る。


あれから、ずっと考えているのだが。
どうやって頭だけ、雲の上へ持っていったらいいものかと。


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