つわものども

戦火に追われ、流れ着いた先は田舎の寒村。
そこにあるちいさな神社の祠を、仮住まいとする。
だあれも来ない。聞こえるのは、鳥と虫の声だけ。
これはこれで風流なもんだと気に入った。


ある朝、ものすごい数の足音と、ただならぬ気配で目を覚ます。
破れ障子の隙間から見ると、よろい武者の大群が、こちらへやってくる。
瞬く間に、やつらはこのちいさな祠を、四方八方からぐるりと取り囲んだ。
かまえた槍が、自転車のスポークのようにきれいに並んでいる。
と思うんだ。上から見たら。


「逃げ隠れはゆるさんぞ。その首、頂戴つかまつる」


大将が叫ぶ。俺を殺す気だ。
吹き手が、でかいほら貝を天に向け、吹き鳴らそうとしたその時。


ウウウウウウウウウウー・・・


サイレンの音がこだました。
空襲警報だ。
はるか向こうの夕焼け空に、トンボのようなものが群れ飛ぶのが見える。


「敵機来襲!」
「退却ー!退却ー!」


よろい武者たちは、てんでにざぶとんを頭に載せ、走り去った。
やれやれ、こんな形でアメリカに命を救われるとは。


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