星の輪っか

「人間は、それ自身で一本の道なのだ」
大王は言った。


「目の前の出来事に対して、どう反応するか。
そして、行動として何を生み出すか。
その道筋はいつも決まっていて、同じ軌道を回りつづける」


大王は、机の上に土星の縮小モデルのようなものを浮かべた。
「これが、おまえだ」


えっ。これ、惑星じゃないですか。


「惑星本体じゃない。
まわりについてる輪っか。それがおまえだ。
時間の流れそのもの、動きのすべてがおまえなのだ」


じゃ、惑星は?


「この宇宙全体だ。おまえに見えるものすべてだ。
それはいずれもおまえ自身に依存し、おまえの中にある」


大王は、腕まくりをして身を乗り出した。
「さて、これから、お前の宇宙にちょっとした模様替えをほどこしたいのだ」


そして、俺の輪っかを、ぐいと太い指でねじった。


桜の木に、大量の赤いリンゴがぶらさがった。


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