直飲み
のどが渇いてるんだあ。冷蔵庫から直飲み。
真っ白な機体を傾け、ごくごくごく。中身は何だ?
おや、ドアを開けると、冷蔵庫の中は畳敷きの大広間だ。
奥まで並べられた長机には、肩幅ほどの間隔でずらりとコップが。
コップは、どれも空っぽだ。飲み物は入っていない。
このコップじゃないとするなら、じゃあ、俺が飲んだのは何だったんだろう。
いや、むしろ俺が飲んだからコップが空っぽなんだというべきではないか。
ぴんぽーん。
チャイムが鳴った。
冷蔵庫を開けると、黒い羽織のコワモテ集団が立っている。
「おい、おめえさん、テーブルの上のビール飲まなかったかい」
いえ。めっそうもない。存じ上げませんです。はい。
ああ、怖かった。そうか、中身はビールだったか。
よしよし、ドアにマジックで「ビール」と書いておこう。
どんどんどん。
冷蔵庫のドアが乱暴に叩かれ、コワモテ集団が押し入ってきた。
「ちょっくらごめんよ」
ドアを見ると、「ビール」の文字。
「やっぱりてめえじゃないか」
ぎらり。抜かれた脇差が光る。
さあみなさん。私は、これからえらい目にあいそうですよ。