流星カフェ

フランスの田舎町。
ホテルから出て、雨の石畳を歩く。
ここらはカラフルな店が軒を連ねていて目に楽しいが、
今日は雨のせいで人通りがほとんどない。


道の両脇の店はどれも平屋建てで、空が大きく見える。
もしかしたら、ここは中国かもしれない。
店の中にちらほら見える人々は、欧米人ともアジア人ともつかない顔つきだ。


急に突風が吹き、轟音と共に大きな飛行機が空から舞い降りてきた。
それは飛行機だが、機首の部分しかない。
胴体も、羽根もなく、まるい砲丸のような機体の下にちいさなコマがついているだけ。
本当に飛行機の胴体が切り落とされたかのようだ。
それの切り口が石畳にこすれて、派手な火花を噴き出しながら滑走する。
切り口の中を覗くと、飛行士2人とスチュワーデス1人が、操縦席にぶらさがっている。


やがて火花はちいさくなり、機体は一軒のカフェの前で停まった。
金髪で背の高い飛行士たちは、笑いさざめきながら中へ入ってゆく。
近くへ寄って見ると、機体の横腹には「COMMET」と書かれてあった。


雨足が強くなってきた。
オープンカフェに陣取り、このコメット号がまた発進するところが見たいとも思ったが、
なんとなくホテルへ引き返してしまった。


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