アリを動かす

公園で、毎日毎日、アリを見ている男がいる。
「ご趣味ですか」と聞いてみると、趣味ではないという。


「アリを動かし続ける。止まりかけたら、砂糖を撒いてアリたちの気を引く。
これが仕事なんですよ」


蜜を集めるのか、それとも何かの栽培につながっているのかとたずねたが、
そうでもないようだ。


「物を生産するだけが仕事じゃありません。
流れを作るのが、仕事の本来なのです」


実際、夕刻になると男は、小銭の入った重そうな袋を抱えて立ち上がった。
そして、住宅街に消えていった。


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