進まない道

冬枯れの道は、殺風景だ。人々は、からっ風から身を守るように、早足で歩く。
駅に向かって歩いているのだが、さっきから全然進んでいる様子が無いのはなぜだろう。
右手の公園はずっと同じだし、向こうにある教会の尖塔も、一向に近づく気配が無い。


前を行く人も、後ろを歩く人も、ずっと自分と同じ距離だ。
同じスピードで、じつにゆっくりと前進している。


これは、列車の窓から遠くの景色を眺めた時の、あの感じに似ている。
山並みも田園も、まるで静止画を見ているようにゆっくりと流れてゆく、あの感じ。
足はせかせかと動いているのに、風景だけはやけに悠長なのだ。


・・・もしかしたら、これは電車なのではないか?


どこからかアナウンスが聞こえてくる。
「つぎは〜挽肉〜挽肉でーす」


血なまぐさい臭いが、うしろから追っかけてくる。
どうも、ろくでもない危険が迫って来ているようだ。
早く駅にたどり着こうと足を速めるが、まだやっと街路樹を一本通り越したばかりだ。


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