呪いのシチュー
森の中を歩いていると、神社をみつけた。
赤い鳥居と、きつねの向こうに、ちいさな祠が見える。いいものだなあ。
もうすこし行くと、また神社があった。
それからまたもうすこし行くと、また神社があった。
どんどん行くと、たくさんの神社が群生しているスポットをみつけた。
こりゃあいいぞ。
神社をつぎつぎにむしると、かごいっぱいに取れた。
これを熊さんのところへ持って行って、おいしいシチューにしてもらおう。
「おやおや。よく来た。よく来た」
やさしい熊さんはにっこりして、かごの神社を大鍋にほうりこんだ。
「ホワイトシチューをつくってあげようねえ」
おおきな背中が、キッチンの湯気の中でコトコトゆれる。
おいしいシチューになあれ。
暖炉の前で熊さんとチェスを差していると、キッチンがどうも変だ。
水木しげるの妖怪漫画にでてくるような、妖しい霧が漂い始めている。
「おやあ。呪われてるんじゃないかなあ」
熊さんは、様子を見にキッチンへ入っていく。
そして、すぐに帰って来て、真顔で言った。
「すっごい呪われてる」
小高い丘の上まで逃げて、一息つく。
「こわかったねえ」
あの神社は、食べられるやつではなく、毒神社だったのかもしれない。
いや、そもそも神社は食べるべきものではないのかもしれない。
「すっごいよお。すっごい呪いだよお」
熊さんは、ちいちゃなオペラグラスで、森の方を眺めている。
家のあるあたりからは、真っ黒な煙がたちのぼり、空にどくろの顔を描いている。