またたく風景
湖の水面を眺めている。
ときおり吹く風に立つさざなみを、そして、その下に泳ぐ魚たちを。
湖のほとりには、森の木立が並んでいる。
緑に生い茂る葉も、ときおり吹く風に、さわさわとゆれる。
そんな光景を眺めているうちに、だんだん視線はあいまいになる。
そしていつしか、水面に反射する影にくぎづけになっていった。
逆さになった森の木々は、風にゆられて、もやもやと崩れる。
それにつれて、自分の意識も、もやもやとぼやけていった。
と、そんな夢うつつの中で。
景色が、まばたきをした。
鳩の目のように、大きなまぶたが風景の上下から同時に降りて来て、
ちょうど湖面の辺りで閉じ合わされた一瞬、ぱちくりと暗くなったのだ。
つぎに景色が開けたときには、もう湖も、森も、そこには無くなっていた。
そして、風景だけが、こっちをじっと見ていた。