鮮明な記憶

目の前の景色が、くるくるとスクロールのように丸まって、地面に落ちた。
いま目の前に見えている景色は前のと同じだが、どこか雰囲気が違う。
さいころに見た、記憶の中の、どこかなつかしい景色なのだ。


その景色をじっと見ようとすると、またそれもくるくると丸まって、
落ちてしまった。
また広げようとするが、さっきの丸まったやつと、どっちがどっちなんだか、
もう分からない。
二枚とも地面に広げて見比べてみるが、見たところ同じに見える。


と思うと、また景色が丸まって落ちてきた。
そして、あのなつかしい景色が広がっている。
それはどうやら、焦点を絞ろうとすると、変わってしまうらしい。
そして、焦点がぼやけていると、出現するらしい。


足元はもう、丸まった景色で、足の踏み場も無くなってきている。
これが「知識」ってやつなんだろう。


にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ