蓄積されたもの

死神が現れて、言った。
「おまえ、明日死ぬからな」


そんな未来のことがわかるもんか、と言い返すと、
死神はフフンと鼻で笑った。
「自分の未来のことは、俺だって知らんさ。
でも、お前の明日は分かる。全部、過去の記録そのまんまだからだ」


・・・それ、「馬鹿だ」って言ってんのか?


気に入らないやつだ。
あたまにきて、死神の胸ぐらをつかみかけた。


・・・つかみかけたが、やめた。
なんとなくだが、もういいか、と思ったのだ。
明日死ぬのも、しかたがないだろう。死神が言うんだからな。


「おい、今回は殴らないんだな」
死神が、にやりと笑った。
「これまで666万回俺を殴ってきて、やっと学習したようだ。
なんらかのものが、生まれ変わるたびに蓄積されてはいるんだな」


えっ? 
・・・と、いうと。明日死ななくていいのかな?


「死ぬに決まってるだろ。寿命は寿命なんだから。
やっぱりお前って、馬鹿だなあ」
爆笑する死神。


殴りたい。殴ってやりたい。
次回は殴らずに済ますとして、今回は殴っておきたい。


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