水車の図書館

村の図書館は、丸木橋を渡ったところにある。
大きな木の水車が川から水をくみ上げ、書棚の間に流し込んでいる。
一階は児童書で、二階が一般書。
水は二階にも供給される。ここにも、水車が使われている。


史書たちは、カウンターの中で本を選別する。
そして、碾き臼にどんどん放り込んでゆく。
粗い粉の碾き臼。すこし細かい粉の碾き臼。とても細かい粉の碾き臼。


こっとん。こっとん。 こっとん。こっとん。


水車はおだやかな音を立てて、ゆっくりまわる。
村人たちは、書棚のあいだをカヌーで通る。カヌーから本を出して、史書に渡す。
川の水は、ゆったり、ゆったりと流れている。
子供たちが、めだかを追っかけてしぶきをあげる。


木と、紙のにおい。
吹き抜け部分では、天窓からの光が差し込んで、水底を照らす。
ほら、あの石の陰に魚が群れているぞ。


「ヤスオ。もう帰るよ。あんたは遊んでばかりだねえ」


お母さんは、本を何冊か挽いてもらった。
今日の3時は、その粉で焼いたパンだ。
大人の推理小説なんか食べさせられてもよく味が解らないんだが、
ヤスオにとっては、おなかの足しだ。


本は、どこから来るのだろう。
ヤスオはいつか、本が出来るところへ探検に行きたいと思っている。


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